vent / Serph
2010年に突如現れた音楽クリエイターSerphのデビューアルバム「vent」をご紹介します。
このアルバムとの出会いは大阪梅田のタワーレコードの試聴コーナー。「精神的な飢餓感を満たすために作曲をしている」という解説を見て聴かずにはいられなかったのを覚えています。
最初は「精神的な飢餓感を満たすため」というコピーからロックやメタルなどの激しいジャンルを想像していたのですが、実際に聴いてみるとそれらのジャンルとは対極にあるような美しくファンタジーな世界観が広がっていました。当時いわゆるメジャーな曲ばかり聴いていた私の心にもすっと入ってきました。大学受験を控え、大好きな音楽をする時間があまりとれなかった高校生の私もSerphと同じく「精神的な飢餓感」を感じていたのかもしれません。
Serphの曲は歌の入っていないインスト曲が多く、ミニマル・ミュージックやエレクトロニカの影響を感じさせる曲調ですが、物語性があるので普段歌物しか聴かない人にも入りやすいのではないかと思います。
まだSerphを聴いたことがない人にはデビューアルバム「vent」の3曲目に収録されているFeatherという曲から聴いてみることをお勧めします。様々な音色の楽器が代わるがわる登場し、まるで絵本の物語を読んでいるような気持ちになれると思います。
横田晃希(作曲家)